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浦和地方裁判所 昭和58年(ワ)442号 判決 1984年11月27日

原告 馬場弓子

右訴訟代理人弁護士 森永友建

右訴訟復代理人弁護士 高池勝彦

被告 塩沢茂樹

右訴訟代理人弁護士 小川吉一

主文

被告は原告に対し、金一九九二万〇〇四〇円及び内金一八一二万〇〇四〇円に対する昭和五三年七月九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを二分し、その一を原告、その余を被告の負担とする。

この判決の主文第一項は、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

「1 被告は原告に対し、金四五五一万一九八四円及び内金四三〇一万一九八四円に対する昭和五三年七月九日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行宣言

二  被告

「1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第二当事者の主張

一  原告・請求原因

1  交通事故の態様及び被告の責任原因

被告は、昭和五三年七月九日午前四時頃自己保有の普通乗用自動車(以下、甲車という。)を運転して時速約四〇キロメートルで熊谷方面から坂戸方面へ向けて走行中、坂戸市大字片柳二四六番地付近、事故地点から約五〇メートル手前において自車進行車線前方左側に停車中の車輌を発見し、同時に訴外竹井好人運転の普通乗用自動車(以下、乙車という。)が対向車線を進行してくるのを認めたにも拘らず、事故地点約三〇メートル手前において右停車中の車輌を追い越すために対向車線内に進入し、甲車を乙車に衝突させ、乙車に同乗していた原告に傷害を負わせた。よって被告は原告に対し、自賠法三条に基づき右交通事故による傷害に基く損害を賠償する責任がある。

2  原告の受傷部位及び入・通院期間

(一) 原告は右事故により頭部外傷、右大腿骨骨折、右股関節脱臼、顔面挫傷及び挫創の傷害を受け、次のとおり医師等の治療を受けた。

(二) 入院期間

(1) 昭和五三年七月九日から同年一〇月一〇日まで坂戸中央病院

(2) 昭和五七年一月二五日から同年三月六日まで大阪大学医学部附属病院

(三) 通院期間

(1) 昭和五三年一〇月一一日から昭和五五年七月二日まで坂戸中央病院(実日数八日)

(2) 昭和五三年一一月一七日から同年一二月六日まで岸田整骨院(実日数六日)

(3) 昭和五六年九月一一日から同年一〇月三〇日まで埼玉医科大学附属病院(実日数三日)

(4) 昭和五六年九月二九日から同年一二月八日まで防衛医科大学校病院(実日数三日)

(5) 昭和五七年三月七日から同年九月六日まで大阪大学医学部附属病院(実日数三日)

3  後遺障害

原告は右事故により、次の後遺障害を負った。

(一) 右股関節用廃

原告は、昭和五三年七月に右大腿骨頭に人工骨頭の挿入術を受けたが、この人工骨頭にしなければならなかった事が右股関節の疼痛、運動制限、跛行の原因となっていた。そお後、同部位の疼痛が著しくなったため、医師の診断に従い人工股関節置換手術を受け、現在に至っている。本障害は、自賠責保険上、自賠法施行令別表第八級七号(後記(二)と併せて第七級)の後遺症と認定された。

(二) 顔面醜状痕

前額部に長さ四センチメートルの線状痕が残存している。本障害については、自賠責保険上、自賠法施行令別表第一二級一四号の後遺症と認定された。

4  損害額

(一) 治療費 金三六五万一三一三円

(二) 入院諸雑費 金六万七五〇〇円

五〇〇円(一日当り)の一三五日分(九四日と四一日)

(三) 付添看護費 金六九万三二六一円

(四) 通院交通費 金一万〇六四〇円

坂戸中央病院、岸田整骨院への通院はあわせて一四回あり、受傷部位、受傷状況、及びバスの便等の関係からタクシーを利用していたので、タクシーの基本料金である三八〇円を片道の交通費とする。

(五) 休業損害 金二二六万三五二〇円

原告は昭和五三年五月一六日にスナック弓を開業し、同店の経営者(オーナーママ)兼ホステスとして稼働していたが、本件事故のあった日から坂戸中央病院退院日の同年一〇月一〇日までの九四日間、同店に出勤することができなかった。

同店の一日の営業時間は通常午後六時から深夜二時までの八時間で、定休日はなかった。そして、原告は同店のオーナーママとしてその賃金は、同店の従業員たるホステスの二倍である時給二〇〇〇円と看做すのが相当であり、これを年収に直すと、五八四万円になるところ、原告が休業したために同店に生じた減益は、一ヶ月当り七三万二四五四円であり、これを年間に直すと八七八万九四四八円となる。そして、この額は先に時給二〇〇〇円を基礎に計算した金額の約一・五〇五倍である。従って、時給二〇〇〇円を基礎に計算した原告の休業期間中(九四日間)の休業損害額(時給二〇〇〇円の一日当り八時間の九四日分)に一・五〇五を乗じた二二六万三五二〇円が、原告が同店に出勤しなかったことによる休業損害となる。

(六) 後遺障害逸失利益 金四七七〇万六二九一円

原告は本件事故当時、スナックの経営者兼ホステスとして稼動していたものであるが、店舗開設に一〇〇〇万円以上の設備投資をしたこと、開店三日後にはもう一店舗増設する計画があったこと、老齢になっても身体の自由がきく限り経営を続けるつもりでいたことなどから、少くとも一〇年、四七歳に達するまではこの仕事を継続できたものと考えるのが相当である。

(1) 昭和五三年一〇月一一日(原告がスナックに復帰した日)から、昭和六三年五月一日(原告が四七歳に達する日)までの三四九一日(九・六年)間 三六八三万七八五六円

(イ) 年収 八七八万九二〇〇円(前記(五)参照)

(ロ) 就労可能年数 九・六年

(ハ) 労働能力喪失率 五六パーセント

後遺障害等級第七級相当の喪失率による。

(ニ) ライプニッツ係数(九・六年) 七・四八四四

(ホ) 計算式 8,789,200円×0.56×7.4844

(2) 昭和六三年五月二日から昭和八三年五月一日(原告が六七歳に達する日)までの二〇年間 一〇八六万八四三五円

(イ) 年収 一九八万七六〇〇円(昭和五六年女子四八歳平均賃金による)

(ロ) 労働能力喪失率 五六パーセント

(ハ) ライプニッツ係数 九・七六四五

一四・〇九三九(現在より六七歳までの係数)から四・三二九四(現在より四七歳までの係数)を減ずる。

(ニ) 計算式 1,987,600円×0.56×9.7645

(七) 入・通院慰謝料 二五六万三〇〇〇円

(1) 第一回目の入・通院分 一七三万九〇〇〇円(入院九四日、通院六三一日間)

(2) 第二回目の入・通院分 八二万四〇〇〇円(入院四一日、通院八九日間)

原告は右のとおり二回の入院をしているが、その間が三年三ヶ月以上離れている事および、第二回目の入院は第一回目の入院の苦痛が忘れられた後の改めての入院であったから、第一回目と同程度の苦痛を味わった事から、二回の入院期間を通算して一個の入院期間を定めるのは適当ではなく、第一回の入院と通院とで一つの入・通院慰謝料を勘案し、第二回の入院と通院とで一つの入・通院慰謝料を勘案し、両者を合計するのが相当である。なお本件は重篤な傷害を受けたことによる入・通院であるので東京地裁発表の入・通院慰謝料表を一・三倍したものによる。

(八) 後遺障害慰謝料(第七級) 六六八万八〇〇〇円

自賠責保険の後遺障害保険金額の八〇パーセント

(九) 弁護士費用 二五〇万円

原告は、示談による解決を望んでいたところ、被告契約の保険会社より示談金額の提示があったが、その金額は傷害分のみとして既払金額を含めて五四四万〇九八五円と低額であった。又、右会社担当者の説明によれば、後遺障害による損害については自賠責保険から支払われた損害賠償額以上は認められないとの事でありさらに、右股関節の症状悪化による再手術費用についても被告には支払意思がない旨の通知を受けたので、原告は示談による解決は不可能と判断し、やむを得ず、原告訴訟代理人たる弁護士に委任して本件訴訟を提起した。原告は本件訴訟終了後、同弁護士に対し相当額の費用を支払う旨約束しているが、その内二五〇万円は被告が負担すべきである。

5  損害の填補

原告は、本件交通事故に関し左の金額を受領している。

(一) 被告から 三九一万一五四一円

(二) 自賠責保険から 一六七二万円

(三) 合計 二〇六三万一五四一円

よって原告は被告に対し、右事故による傷害に基づく損害賠償として、右受領金額を控除した四五五一万一九八四円及び内弁護士費用を除く四三〇一万一九八四円に対する本件交通事故発生時である昭和五三年七月九日から完済に至るまで民法所定年五分による遅延損害金の支払いを求める。

二  被告

1  請求原因1の事実を認める。

2  請求原因2(一)、同(二)の(1)、同(三)の(1)・(2)の各事実を認め、同(二)の(2)、同(三)の(3)ないし(5)の事実は知らない。

3  請求原因3(一)の事実のうち、原告が人工股関節置換手術を受けた事実は知らないが、その余の事実及び同(二)の事実を認める。

4  請求原因4(一)の事実は三二一万八二八〇円(請求原因2(二)(1)及び(三)(1)、(2))の限度で認め、その余は知らない。同(二)の事実は知らない。同(三)の事実を認める。同(四)の事実は知らない。同(五)の事実のうち、原告が昭和五三年一〇月一〇日ころからスナックで稼動した事実を認め、その余の事実は知らない。損害額の算定方法については争う。原告の主張によれば原告はスナック弓の経営者であるから、その収入の計算にあたっては、売上高から必要経費を差し引いた実質収入を基準にすべき処、原告は、スナック開店後約五〇日後に本件事故に遭遇しており、正常な状態での稼動は右期間しかない。そして、スナック等の売上げは月毎に又季節によって変動のあることは、容易に推認し得るのであるから、実質収入を基準にして逸失利益を算定する場合には、少くとも一年位の経営実績を基礎にすべきである。しかし、原告の実質収入を把握すべき資料がない以上、賃金センサス等の賃金統計数値によりその収入を認定するのが妥当である。原告の一ヶ月あたりの減益が七三万二四五四円であるとの事実を否認する。右金額は昭和五三年八月、九月、一〇月の三ヶ月間の減収額である。同(六)は争う。(1)の金額の算定方法については同(五)について述べたと同様相当でない。同(七)の事実のうち原告が二回入院した事実を認め、損害額については争う。同(八)、(九)は争う。

5  請求原因5の事実を認める。なお既払金の内訳は次の通りである。

(一) 治療費(内訳前述) 三二一万八二八〇円

(二) 附添看護費 六九万三二六一円

(三) 後遺障害による慰謝料及び逸失利益の内払金 一六七二万円

第三証拠《省略》

理由

第一  交通事故の態様及び被告の責任原因(請求原因1の事実)については当事者間に争いがない。

第二  原告の受傷部位及び入・通院期間(請求原因2)

原告が、右交通事故により請求原因2の(一)記載の各傷害を受けた事実は当事者間に争いがない。又、右傷害により、原告主張の期間坂戸中央病院に入院した事実及び原告主張のとおり同病院及び岸田整骨院にそれぞれ通院したことは当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、原告主張の期間大阪大学医学部附属病院に入院した事実及び原告主張のとおり同病院、埼玉医科大学附属病院、防衛医科大学校病院にそれぞれ通院した事実が認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。

第三  後遺障害(請求原因3)

原告が、本件事故により請求原因3記載の各後遺障害を負い、自賠責保険上の認定を受けた事実につき当事者間に争いがない。

右股関節の障害について詳述するに、《証拠省略》によれば、原告は、本件事故により右大腿骨頭が完全に破砕されたため、坂戸中央病院において昭和五三年七月二五日人工骨頭による股関節形成手術を受けたが、その後、原因は明らかでないが、(原告の特段の所為によるものと認められないので、以下のことも本件事故と相当因果関係のあるものと判断する。)、右人工骨頭の骨盤内への沈み込み(股臼摩耗の結果である中心性脱臼)が進行し、右股関節の用廃、同部位の激痛、歩行支障などの障害が生じ、その除去のため、さらに昭和五七年二月八日大阪大学医学部附属病院医師廣島和夫らにより人工股関節置換手術がなされたこと、右手術後の経過は良好であって、約半年間両松葉杖を用いる程度の生活上の支障があったものの、その後は概ね通常の生活が可能となったこと、もっとも、人工骨頭の性質上、その摩耗等が予想され、良好な場合でも最長二〇年を超える効用の維持は期待されず、さらに、故障、早期の再手術の必要が生ずる虞は否定されないので、専門医たる同医師においても、原告に対し、同関節の使用、荷重の回避を強く助言し、過激な運動はもとより、歩行も可能な限り避け、歩行時には必ず杖を用いるよう指導しているが、日常家事等はやむなく放任していることが認められる。これによると、第二回手術後においても、同関節用廃の状態にあるとはいえないが、立業は不可能であり、軽易な労務以外の労務に服することができない状況にあるとみるのが相当である。

第四  損害額

一  治療費 三六三万一三一三円

前記坂戸中央病院及び岸田整骨院における治療費三二一万八二八〇円の限度で被告はこれを争わず、右両院における治療費が右金額を超える旨の証拠はない。その余の病院における治療費の額について判断するに、《証拠省略》によれば、昭和五六年九月一一日から同年一〇月三〇日までの埼玉医科大学における治療費が六三〇〇円である事実、同年九月二九日から同年一二月八日までの防衛医科大学校病院における治療費が一万円である事実、及び同五七年七月一一日以降(終期不明)の大阪大学医学部附属病院における治療費が三九万六七三三円である事実がそれぞれ認められ、右認定を超える治療費を認めるに足る証拠はない。

二  附添看護費 六九万三二六一円

右については当事者間に争いがない。

三  入院諸雑費 六万七五〇〇円

前記の通り原告は坂戸中央病院及び大阪大学医学部附属病院に合計一三五日間入院していた事実が認められ、その間、一日当たり五〇〇円の入院諸雑費がかかったものと推認される。

四  通院交通費 一万〇六四〇円

原告が坂戸中央病院、岸田整骨院へ併せて一四回通院したことは、既述のとおりであって、前述の受傷部位等に照らしタクシーの利用を相当とするところ、その片道料金が三八〇円を下らないことは公知の事実であるから、その二八倍に当る一万〇六四〇円の通院交通費の出捐を要したものというべきである。

五  休業損害 九七万円

《証拠省略》によれば、昭和五三年五月一四日ないし同月一六日ころ原告がスナック弓を原告自ら経営者(オーナーママ)兼ホステスとして開業したが、本件事故日である同年七月九日から同店に出勤できなくなった事実が認められる。同年一〇月一〇日ころから原告が同店に復帰し稼動し始めた事実は当事者間に争いがない。右の昭和五三年七月九日から同年一〇月一〇日ころまでの間に原告がスナック弓において就業しなかった事による損失額については、原告が同店の経営者であった事に鑑み、原告が右期間中、同店において就業できなかったことによる同店の減収額をもって算定するのを相当とするところ、前掲《証拠省略》によれば、同店においては、オーナーママの原告の存在が営業上重要であること、事故発生に至るまでの間、その酒類仕入は平均月三〇万円位で、これから推算すると、売上がその五倍の月一五〇万円位であったこと、事故の日から三か月間の売上額は約二九〇万円であって、その間の売上減は約一六〇万円となるが、これに対応する経費(仕入)減が約六三万円となることが認められ(《証拠省略》中対応人件費の差引は相当でない。)、結局その間の同店の収益減は、九七万円となる。右によれば、原告が右スナックにおいて就業できなかったことによる原告の損失額は九七万円とみるのが相当である。《証拠判断省略》

六  後遺障害による逸失利益 二四六九万〇八六七円

1  原告が本件事故当時従事していた職種はスナックの経営兼ホステスであり、営業が深夜にわたり、経営が景気等の環境的要因に左右され易い等の諸般の事情に鑑み、原告が本件事故にあわなければ、原告の主張する通り、原告が四七歳に達するまで右職業を続け、事故以前同等の収益を挙げていたものとみるのが相当である。

そこで昭和六三年五月一日(原告が四七歳に達する日)までの逸失利益について判断する。

《証拠省略》によれば、原告は昭和五三年一〇月一〇日の退院後は、右足の支障、痛みに拘らず、同店に戻って約三年間営業を続けたものの、痛み等に耐えられず、昭和五六年暮これを廃業するに至ったことが認められるところ、逸失利益算定の基礎となる原所得額については、前記五に述べた同店における原告の労働による寄与額とみられる三ヶ月当り九七万円(年額三八八万円)とみ、また、前記第二、第三の事実に照らし、労働能力喪失率については、右期間内に第二回手術による労務不能時期が含まれることも考慮し、原告主張の五六%とみるのを相当とする。右に基いて昭和五四年五月一日以降の分に限りライプニッツ係数を用いて年五分の中間利息を控除して右の約九年七ヶ月分の現価合計を算出すると一五九二万六〇〇〇円となる。

2  昭和六三年五月二日から昭和八三年五月一日(原告が六七歳に達する日)まで

右の期間については、今後の賃金変動も考慮し、原告主張のように昭和五六年度女子四八歳平均賃金を基礎に算定するのが相当と認める。

年収 一九八万七六〇〇円

労働能力喪失率 五六%(第三に述べたように、人工骨頭の効用の低下、再手術の可能性等を考慮する。)

ライプニッツ係数 九・七六四五(昭和五八年五月初の現価)

さらに、昭和五三年七月(事故の日)から昭和五八年四月までの単利年五分の中間利息を控除する。

1,987,600×0.56×9.7645÷1.24

右期間の逸失利益の事故時の現価は、八七六万四八六七円となる。

3  1、2を合計すると、原告の後遺障害による逸失利益額は二四六九万〇八六七円となる。

七  慰謝料(後遺症分を除く。)

原告が本件事故により被った傷害の治療に要した入・通院期間は前記第二の通りであり、右傷害により原告は、多大の精神的苦痛を被ったものというべきところ、右傷害による慰謝料はその部位程度等の事情を考慮し、後記後遺症にかかる分を除き二〇〇万円が相当である。

八  後遺障害慰謝料 六六八万八〇〇〇円

原告が本件事故により被った後遺障害については前記第三のとおりである。右による慰謝料は、原告主張の金額をもって相当と認める。

九  弁護士費用 一八〇万円

《証拠省略》によれば、原告主張のような経過で原告は本件事故による損害賠償を求めるため、本件訴訟の提起を余儀なくされ、これを本件訴訟代理人たる弁護士に委任し、相当の費用報酬の支払を約したことが認められる。そのうち、本件訴訟の経緯、認容額等に照らし、一八〇万円を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。

第五  損害填補 二〇六三万一五四一円

右の額について当事者間に争いがない。

第六  結論

以上によれば、被告は、本件事故による傷害に基づく損害賠償として原告に対し金一九九二万〇〇四〇円及び弁護士費用を除く金一八一二万〇〇四〇円に対する本件事故の日である昭和五三年七月九日から右支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるから、原告の本訴請求は右の限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないので失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高山晨)

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